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熱中症患者も出た「モンストフェスティバル」、なぜ大きな混乱が起こったのか 2015/08/18 佐野 正弘=フリーライター ITpro

 

 

 8月2日に開催された、人気スマートフォンゲーム「モンスターストライク」初の単独イベント「モンストフェスティバル2015」において、炎天下の中イベントに列をなした参加者が熱中症で倒れるなど多くのトラブルに見舞われた。なぜ、このような事態になってしまったのだろうか。

真夏のイベントで大きな混乱が発生

 夏休みシーズンを迎え、全国各地で様々なイベントが実施されている。最近ではゲームアプリを中心として、スマートフォンのアプリを提供する事業者が、ファンに向けてリアルイベントを実施する機会が増えている。

 そんなスマートフォンアプリ関連のイベントにおいて、先日大きなトラブルが発生し、テレビで取り上げられるなど大きな話題となった。それは、ミクシィの人気ゲームアプリ「モンスターストライク」の初となる単独イベント「モンストフェスティバル2015」で起きた。

 実際、どのようなトラブルが起こっていたのだろうか。会場の幕張メッセにイベントのキャパシティを超えた多くの人が押し寄せた結果、正午前には入場規制がかかって入場ができなくなった(写真1)。その結果、最寄駅の海浜幕張駅まで行列ができてしまったのだ。30度を超える猛暑の中、数時間にわたって屋外に並んでいたことから、熱中症で倒れる人が続出。各種報道では11人が病院に搬送されたという。

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写真1●「モンストフェスティバル2015」の会場内の様子。非常に多くの人でひしめき合っており、筆者が確認した時点ではグッズ販売コーナーが4時間半待ちという状況であった

 筆者も当日、同イベントの取材のために会場を訪れていたのだが、午前中から入場規制がかけられたことでスタッフに問い詰める人が見られたほか、行列を取り仕切るスタッフが不足しているのか、長蛇の列を管理しきれていない印象を受けた。また会場の中でも、時折再入場規制がかけられたり、具合が悪くなった人が搬送されたりするなど、かなり混乱している様子を実感したのを覚えている。

 そうした事態を招いたことから、ミクシィはお詫びの声明文を出すに至っている。しかしなぜ、人気ゲームアプリのイベントで、ここまで大きな混乱が起こってしまったのだろうか。

 

来場者数の読み違えと経験不足が混乱の原因に

 当日の様子を見るに、大きな理由の1つは、明らかに来場者数の読み違えであろう。午前中の段階で入場規制がかかるほど、ユーザーが押し寄せる事態は想定していなかったと見られ、特に屋外の行列を取り仕切るスタッフは明らかに人数が不足している印象を受けた。

 なぜ、それほどまでに来場者が押し寄せたのかというと、2つの要因が考えられる。1つは、モンストフェスティバルが無料で誰でも参加できるイベントであったこと。そしてもう1つは、来場者限定の特典として、ゲーム内で利用できる限定キャラクターがもらえるシリアルコードをプレゼントしていたことだ。

写真2●2011年に開催された「東京ゲームショウ」におけるグリーブース。当時ソーシャルゲームのブームが起こっていたことから、会場限定のカードを求めて多くの人が列をなす盛況ぶりであった
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 ゲーム内で利用するレアアイテムを入手できるカードなどを会場で配布するという集客手法は、これまでもいくつかのイベントで実施されている。例えばmobageGREEなどブラウザータイプのソーシャルゲームが人気を博していた2011〜2012年頃の東京ゲームショウにおいても、グリーなどが同様の集客手法を実施してブースに長蛇の列ができたことがある(写真2)。

 そして現在、モンスターストライクはスマートフォンゲームの中でも1、2位を争う人気で、かつてのソーシャルゲームを超える盛り上がりを見せている。その人気ゲームのゲームのレアアイテムがもらえるイベントが、夏休み期間中に入場料無料で実施されていたという手軽さが、非常に多くの人を会場に集結させたといえる。

 

もう1つは、ミクシィがモンスターストライクの単独イベントを実施するのは今回初めてであり、イベント運営の経験が不足していたことだ。ミクシィはこれまで、「闘会議2015」など他社が実施するイベント内でブース出展した経験は持っているものの、あくまで自社のブースの運営のみにとどまっていた(写真3)。来場者の入場管理などイベント全体を仕切った経験はない。それゆえ会場内のスムーズなイベント運営に人員を割いたことで、会場外で想定を上回る来場者に対する臨機応変な対応ができず、大きな混乱をもたらしたといえる。

 同じスマートフォンゲームで人気を集めるガンホー・オンライン・エンターテイメントが、毎年実施しているイベント「ガンホーフェスティバル」においても、2013年には「パズル&ドラゴンズ」の人気が急拡大したことで会場のキャパシティを上回る来場者が訪れ、入場制限がかかり“5時間待ち”となるなどの事象が発生している。同社はそうした経験を基に、会場を年々広げるなどイベント運営の体制を作り上げている(写真4)。ミクシィにはそうした経験がなかったことから、混乱に対応しきれなかったといえそうだ。

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2015年5月に開催された「ガンホーフェスティバル2015」より。「パズル&ドラゴンズ」などの人気を受けて来場者が急増したことから、年々会場規模を拡大している
 

ミクシィがイベントの規模を大きくするのが難しい理由

 なのであれば、より大きな会場を用意してイベントを実施すればよいのではないかと思う人も多いかもしれない。確かに、今回のモンストフェスティバルでミクシィが使用していたのは、幕張メッセの1〜4ホールまでだ。併行して他のイベントも実施されていたとはいえ、より多くのホールを借りてイベントを実施すれば、ここまでの混乱にはならなかったかもしれない。

 しかしながら、ミクシィはモンスターストライクで本格的にスマートフォンゲーム事業に参入し、それが大ヒットへとつながった。現状では、モンスターストライク以外のゲームを抱えていない。それゆえ、今回より広いホールを、モンスターストライク関連の展示やイベントで埋め尽くすには限界があるだろう。実際、会場内には多くの人がひしめき合っていたとはいえ、比較的多くの空きスペースが存在しており、そこに多くの人が座り込んでゲームをしているという状況だった。

 ミクシィは新たなゲームを開発するスタジオとして「XFLAG」を展開することを発表しているが、そこから新しいゲームがいつ出るのか、そしてモンスターストライク級のヒットへとつながるかどうかは分からない。それだけに、会場を借りる予算の問題だけでなく、コンテンツ面でも容易にイベントの規模を広げるのはなかなか難しいと見ることができる。なのであれば、いっそ有料チケット制にするなどして、人数を絞った形でイベント展開したほうが、混乱は招きにくくなるかもしれない。

 スマートフォンの人気アプリに関連したリアルイベントは年々増加傾向にあるし、特にゲームアプリに関しては、競争が激化していることから、今後もその流れは加速していくだろう。だがこうしたイベントは、アプリのファンの満足度をより高めるために実施されるものだけに、混乱によってファンの失望を招いてしまっては意味がない。それだけに、イベント運営にはより周到な準備と、臨機応変な対応ができる体制が求められる。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。