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停滞する代表の救世主となるか?19才MFの底知れぬ非凡さ。 小宮良之 | スポーツライター 2015年8月18日 11時0分

 

 

日本代表監督であるヴァイッド・ハリルホジッチは東アジアカップで、人材の枯渇を嘆いたという。2011年アジアカップ優勝のメンバーが依然として代表の主力。4大会連続でUー20W杯出場を逃すなど、日本サッカーの次世代の伸び悩みは危惧すべき状況と言える。しかし、代表の新陳代謝を促すようなルーキーは一人もいないのだろうか―。
9月3日のカンボジア、8日のアフガニスタンとW杯2次予選に向けた代表メンバー発表が間近に迫る今、19才MFに注目する。

J1リーグ、サガン鳥栖の19才MF、鎌田大地は大器である。ボールの触りがいいだけのテクニシャンやグッドプレーヤーとは、一線を画す。モノが違う、と言ったらいいのだろうか。
<時間を操り、空間を作る>
鎌田は一流選手だけが持っている能力に恵まれている。ボールの置き所をわずかに変えるだけでプレーの選択肢を増やし、最善の判断で有効性を高められる。ファン・カルロス・バレロンルイ・コスタらを彷彿とさせ、快刀乱麻というべきか。ボールを持ったとき、彼を中心に時間はまわり、必然的に"地の利"も得ている。
「入団したときに比べて、体も太く、でかくなっている」
チーム関係者が証言しているように、肉体的な成長も著しい。対戦した選手も、「当たってもびくともしなかった」と驚きを隠せない。
鎌田はプレーするたび、「強さ」を増すだろう。強さの定義はいくつかできるが、単純なフィジカルコンタクトだけを指すものではない。それは例えば、ボールを持ち運ぶ推進力や敵を振り切るパワー、もしくはボールを強く叩くことであり、さらには冷静に空いたコースにシュートを打ち込むという"身につけた技術を試合の中で使えるか"という逞しさと表現してもいい。
7月25日の湘南ベルマーレ戦、鎌田は前半に相手を抜き去りながらドリブルで持ち上がって右足シュートを放っているが、これは出色だった。上半身を前に倒しながら、右足を振り上げているのだが、それはクリップが反動で閉まるような勢いで、上体の強さによってボールが浮くのを押さえながら、精度と強度を伴うシュートを枠内に飛ばしている。このレベルのシュートを連続したプレーで打てる選手は、国内では少ない。
キック一つをとっても、素質の非凡さは歴然。どのように足をボールに当てれば、強く飛び、回転がかかるのか、心得ている。
「まだミスも多い」
そんな声も聞かれる
しかし彼はたとえ三つ小さなミスをしたとしても、一つゴールにつながる大きなプレーをする選手である。トッププロにおいては、ゴールにつながるプレーこそが最高難度で、その仕事ができる選手は宝とされる。8月16日のモンテディオ山形戦では、目の前のディフェンダーの裏を取り、シュートもGKの逆を取ったコースに流し込んでいる.目の前のマークを外すセンスは天分で、時間と空間を感じ取る能力で、どこがゴールを奪うポイントか、というタイミングを分かっているのだ。
「試合中、消えている時間が長い」
その指摘は的外れではないだろう。
だが2トップの一角、もしくは1トップのトップ下でプレーしている鎌田が、ボールに触る時間が限られているのは当然。彼の仕事場はゴールに直結するエリアで、むしろボランチがいる三列目まで軽々しく戻るべきではない。彼が下がった場合、鳥栖は代わりの選手が前線に入る性質を持つチームではなく、ボールに触りたくなる気持ちを抑えて前線で"牙を研げる"という点は好ましいとさえ言える。
鎌田は試合の中で成長できる異能を持っており、「経験不足」という曖昧な表現でブレーキをかけるべきではない。
もっとも、19才MFが学ぶべきことは端的にはいくつもある。例えば、セカンドステージ開幕戦の柏レイソルとの試合で先発した鎌田は2得点をアシストして異彩を放っているが、"中学生でもしない”ミスも犯している。後半、自陣で柏にFKを与えた場面だった。鎌田は壁に入るも、柏の選手がボールを蹴る直前に前に向かってジャンプしている。結果、壁は割れ、強烈なシュートを突き刺された。
「壁は壁であり、動かない」
これは鉄則であり、欧州や南米ではジュニア年代から徹底的に教え込まれる。壁は動かない前提でそこにある。その一角が崩れてしまったら、GKは守りきれない。
「飛び出して、シュートが体に当たったらOKじゃないか」という意見はアマチュアでは通用するが、プロの世界には「不文律」があるのだ。とりわけ、欧州や南米の指導者はこうした行為を毛嫌いする。おまけに、鎌田は体をひねって横向きにジャンプしていた。これは飛んでくるボールへの本能的恐怖が為せる業だが、「叱責」に値する。この失点は彼の過失と言っても過言ではない。事実、このプレーには試合後にチームメイトから厳しい指摘が飛んだと言うが―。
若い鎌田が身につけるべきは、こうした一つ一つの作法である。ピッチに立つ者の流儀、もしくは戦いのディテールと表現しても良い。細かい指摘に聞こえるかもしれないが、プロの原則に従えず傲岸不遜に振る舞うようなら、彼は才能を失い、凡庸な選手になり果てるだろう。
しかし、もしプロとして、戦う者の生き方を身につけられたら・・・。
「(鎌田)大地は動きがしなやかで、ボールの置き所がよく、フツーはできないことを飄々とやってのける。パスだけじゃなくて、シュートもある。独特の間合いを持っていて、『本気を出して走ってくれていたら、出せましたよ』なんてことも言ってくる。現代っ子というか、やればいいんでしょ、みたいな甘いところもあるけど、能力は図抜けていますよ。丸くならず、失敗を経験にして欲しい」
鳥栖のエースで、日本代表FWでもある豊田陽平の言葉である。
19才は分岐点にいるが、その素質に疑いの余地はない。

1972年、横浜市生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターとしての活動を始める。語学力を駆使して欧州選手権、冬季五輪、GPファイナル、W杯などを現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評がある。主な著書に『アンチ・ドロップアウト』『フットボール・ラブ』『グロリアス・デイズ』(集英社)、『ロスタイムに奇跡を』『導かれし者』(共に角川文庫)、『エル・クラシコ』(河出書房)、『サッカー名将・名選手に学ぶ48の法則』(中公新書ラクレ)『王者への挑戦状』(東邦出版)など。最新刊は「おれは最後に笑う」(東邦出版)

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