【ニュース まとめ】はるさめ君にゅーす!

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脱却「原発ゼロ」(中)収支改善、焦点は「玄海」へ 産経新聞 8月12日(水)7時55分配信

 

  「原子炉10時30分、起動」

 11日朝、九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の中央制御室に、作業員の声が響いた。原子炉内では核燃料の間から制御棒が引き上げられた。作業員はその画面を見ながら、核分裂が安定的に持続する「臨界」に向けた操作を続けた。

Photo審査申請済みの15原発(写真:産経新聞) 平成25年9月に関西電力大飯原発福井県)が停止して以来1年11カ月ぶりの原発再稼働だ。九州に限れば23年12月に玄海原発4号機が定期検査入りして以来、実に3年8カ月ぶりに、「原発ゼロ」に終止符を打った。

 九電社長の瓜生道明は「川内原子力発電所1号機は、本日10時30分に原子炉から制御棒を引き抜き、原子炉を起動しました。福島第1原発のような事故は決して起こさないという固い決意の下、地域、社会のみなさまに安心いただけるよう取り組む」とするコメントを出した。

 そもそも瓜生が、社長名でコメントを出すこと自体、極めて珍しい。「再稼働に全力を注ぐ」と常日ごろ、口にしていた瓜生の感慨の深さが見て取れる。

 九州が原発ゼロで突入した4度目の夏。毎年逼迫(ひっぱく)していた九州の電力事情は安定に向かう。原発の地元経済にもようやく活気が戻る。

 薩摩川内市役所応接室で記者会見した市長の岩切秀雄は、掲げられた歴代市長の写真を眺めながらしみじみと語った。

 「4年間の原発停止は、市民生活への打撃が大きかった。(再稼働で)活気は確実に出てくる」

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 川内原発の様子を、もう1人の原発立地自治体の首長は、病院のテレビで見ていた。

 佐賀県玄海町長の岸本英雄は、体調不良のため先週末に入院した。岸本は臨時ニュースで川内原発再稼働を確認すると、自身の体調はさておき、安堵(あんど)の息をついた。

 「川内原発が稼働することは、玄海原発の再稼働にも好影響を与えてくれるだろう。稼働中の原発があれば、動かせるという現実の証明になるんだ」

 玄海原発は、東日本大震災から4カ月後の平成23年7月、再稼働目前に至った。厚さ3千メートルの巨大な岩盤の上に立ち、敷地は津波の危険性がないといえる海抜11メートルの高さにあり、安全面で高く評価されたのだ。

 しかし、当時の首相、菅直人が突然、全国の原発へのストレステスト導入を表明したことで、再稼働にストップがかかってしまった。

 「玄海原発は日本で一番安全な発電所だと自負している。玄海町は九州、わが国のエネルギー供給の一部を担ってきた。その発電所が動かないならば、国のエネルギー政策は前に進まない」

 岸本は、菅直人の判断に憤る。

 九電はその後、玄海原発3、4号機の再稼働に向けた審査を原子力規制委員会に申請した。規制委は昨年8月、玄海原発について、最大規模の地震の揺れ(基準地震動)を了承した。審査の最大のハードルを越えたといってよい。

 「今年夏までには再稼働してもらいたい」

 岸本は今年1月、九電社長、瓜生との会談で、こう訴えた。岸本の元には、地元旅館や商店、農業関係者に至るまで、早期再稼働を訴える切実な声が寄せられている。

 九電にとっても、玄海3、4号機の再稼働は喫緊の課題だ。

 川内原発1、2号機の出力は各89万キロワットと、国内の原発では中型だ。これに対し、玄海3、4号機は各118万キロワットと大きい。電力供給や九電の収支に対する改善効果は、当然ながら玄海の方が大きい。

 再稼働で見込まれる収支改善は川内1、2号機の合計で月150億円、玄海3、4号機は計200億円の効果がある。年間にすると、川内が1800億円で、玄海が2400億円となる。九電は全4基が動かなければ、通年での黒字化は困難とみている。

 川内1号機の再稼働だけでは喜べない現実があるのだ。

 だが、瓜生は岸本との会談で「(平成27)年度中には…」と苦渋の表情を浮かべるしかなかった。

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 国内の電力会社は、川内に続く「再稼働2番手」を争っている。九電関係者は「川内の次も九電玄海、とは簡単にいかないだろう」とみる。

 九電と同様に赤字が続く関電は、原発再稼働が欠かせない。関電高浜原発3、4号機(福井県)は、規制による安全審査には合格したが、福井地裁の裁判長だった樋口英明が、運転差し止めの仮処分決定を出した。この仮処分をひっくり返す司法判断が出ない限り、再稼働はできない。

 さらに高浜の半径30キロ圏内にかかる滋賀県で、知事の三日月大造が「卒原発」を主張しており、地元同意をめぐり議論が紛糾する可能性もある。

 次に審査に合格したのは、四国電力伊方原発3号機だった。伊方は今冬以降にも再稼働を目指す。

 この高浜、伊方の再稼働が遅れれば、玄海のスケジュールに影響する可能性がある。岸本は今、「27年度中の再稼働も難しいのではないか」と懸念を抱く。

 もう一つ、玄海原発には課題が残る。再稼働に向けた「地元同意」だ。

 川内原発の場合、3期目に入った鹿児島県知事の伊藤祐一郎がリーダーシップを発揮し、同意の範囲は薩摩川内市と県で十分と主張し、手続きを強力に進めた。

 一方、佐賀県知事の山口祥義は、県内の保守層を二分する激戦の末、今年1月に就任したばかりだ。さらに、陸上自衛隊が導入する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ佐賀空港佐賀市)配備計画という課題もある。

 佐賀県は今、原発再稼働に防衛という国の重要課題を2つ抱える。どちらも少数とはいえ、強硬な反対派がいる案件だ。

 県議会などの議論に、時間がかかる可能性があり、知事の山口がいかにリーダーシップを発揮するかが問われる。

 今年7月末、玄海町の岸本は、山口と原発再稼働について意見を交わした。山口は再稼働への同意について「相談しながらやっていきましょう」と明言は避けたものの、再稼働には前向きな姿勢をみせたという。(敬称略)(高瀬真由子)

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 ■鹿児島県伊藤祐一郎知事の話

 「(新規制基準に合格してから)約1年弱、11カ月を経て、今回の再稼働に至った。大変長い時間がかかったと考えている。避難訓練については、多くの方に参加してもらうのが前提なので、態勢を構築した上で、できるだけ早い機会、年内に訓練を実施したい」

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 ■九州経済同友会の貫正義代表委員の話

 「川内原発1号機が、新しい規制基準施行後、国内で初めて起動した。九州をはじめ、わが国の電力安定供給確保につながる大きな一歩であり、経済界として大いに歓迎したい。今後、わが国の電力安定供給確保のため、国には、安全確保を前提として、再稼働を申請している他の原発への迅速な審査をお願いしたい」

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 ■九州経済連合会麻生泰会長の話

 「川内原発1号機の再稼働を歓迎する。経済の回復が目に見えて来ている今、九州経済の回復を軌道に乗せるには、安定かつ廉価な電力の供給が欠かせない。川内2号機、玄海原発についても、定められた手続きを着実に進め、再稼働につなげていただきたい」

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 ■福岡県の小川洋知事の話

 「電力は県民生活や企業の経済活動の基盤だ。世界で最も厳しい規制基準に基づき、起動した。原発再稼働により、九電管内全体で、電源が多様になる。今後も国が引き続き責任を持ち安全性を確認しながら、九電も安全確保を第一に、しっかり取り組んでほしい」

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