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ヨネックス事件で学ぶ商標調査の落とし穴 栗原潔 | 弁理士 ITコンサルタント 金沢工業大学客員教授 2015年8月7日 10時15分

 

 「『商品名似てる』ヨネックスを提訴 ゴルフ用品メーカー」という記事を読みました。TOUR Gという商標の商標権を有するゴルフ用品メーカー、ツアージーが、VCORE TOUR Gという名称のテニスラケットを販売するスポーツ用品大手ヨネックスを商標権侵害で訴えたという話です。

TOUR Gは識別力がある部分と思いますし、ツアージー社の登録商標(5307318号(文字)と5731112号(ロゴ))は「運動用具」をカバーしていることから、報道されていない特別の事情があるのでない限り、ヨネックス側の分が悪いと思います。

別の記事ですと、

 

ツアー・ジーの代理人弁護士は「ヨネックス社は、商標登録されているかどうかの調査を十分に行わなかったのではないか」とみている。

 

という発言があります。ブランドにはうるさいはずのスポーツ用品メーカーが商標調査を十分に行なわなかったというケースは想定しがたいですが、試しに、自分も担当者のつもりで検索して見ました。

商標調査は専門業者にお任せすることもありますが、国内の文字商標であれば、特許庁(厳密には関連独立行政法人)の公式サイトJ-PlatPatを使うのが通常です(特許事務所に調査を依頼しても結局J-PlatPatを使うことが多いと思います)。当該ラケット販売開始当時はIPDL(特許電子図書館)というシステムだったのですが、バックエンドシステムは変わっていないと思うので、たぶん同じ挙動のはずです。

まず、J-PlatPatの「商標出願・登録情報」の画面で「商標(検索用)」の欄にTOUR Gと入れても(右側の検索方式をANDにするのを忘れないように)ヒットしません(IPDL時代は半角で入力すると「半角で入力していませんか?全角で入力してください」とアホなエラー・メッセージが出てたと思いますがさすがに自動変換してくれるようになりました)。

さらに、TOUR単独で入力してもヒットしません(TOUR COMPANION等はヒットするにもかかわらずです)。ワイルドカードを使ってTOUR?だとヒットします。また、ブランクなしで、TOURGだとヒットします。デリミターとしてのブランクの処理がちょっとおかしいのではないかと思います。

さらに読み方(称呼)で検索しようと、「称呼(単純文字列検索)」の欄に"ツアージー"を入力してもヒットしません。商標の公報の方を見ると読みは"ツアージイ"に設定されています!

とは言え、普通、商標調査をする時は類似の称呼までチェックします。類似称呼検索はまた別の画面「称呼検索」から行なう必要があるのですが、ここで、"ツアージー"を入力するとちゃんとヒットします。

ということで、いろいろとトラップはあるのですが、ある程度慣れている人ならすぐ見つかると思うので、やはりヨネックス側の商標調査不足のそしりは免れないのではないかと思います。

とは言っても、個人が自分で商標調査する場合には、J-PlatPatには現代的な検索システムでは想像できないような挙動が上記以外にもいろいろあるので注意が必要です。

ところで、商標に限らず特許でもですが、公報データをhttp://www.hogehogex.jp/tm/<公報番号>のような形式でオープンなサーバーに置いておいてくれればGoogle先生が勝手にインデックス作って、シソーラスや表記ゆれも反映して全文検索できるようにしてくれるので、安上がりで上記のようなめんどくさいこともないですし、固定リンクで公報を指定できるようになって便利なことこの上ないのですが、なぜかそういう方向には行かないのですよね(特許庁にはパブコメ上げてるんですが)。


栗原潔
弁理士 ITコンサルタント 金沢工業大学客員教授
日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』、『オープン・ビジネスモデル』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系のリサーチ、コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。

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